水戸市内を東西に横切るように流れる那珂川は、天然アユの漁獲量が日本一の川で、鮭が遡上する川としても知られています。那珂川の下流には涸沼川が合流していて、その涸沼川を遡ると汽水湖の涸沼があります。涸沼はシジミの産地としてだけでなく、ヒヌマイトトンボが発見された場所としても知られている湖なのですが、今、那珂川や涸沼では、この貴重な自然環境が失われてしまうかもしれない大きな問題が起きているのです。
茨城県では那珂川と霞ヶ浦、利根川を約46キロの地下トンネルで繋ぐ霞ヶ浦導水事業が進んでいて、地元漁協の同意がないまま、強引に那珂川に取水口を建設しようとしているのです。霞ヶ浦導水は1900億円をかけて、「霞ケ浦・桜川の水質浄化」「那珂川・利根川の水量確保」「新規都市用水の供給」を目的に作られようとしているものなのですが、既に計画から30年も経っていて15年前には完成予定だったのに、未だに1/3しか出来ていません。
毎日129万トンの水を那珂川から霞ヶ浦に、渇水期には毎日95万トンの水を霞ヶ浦から那珂川に送水して、霞ヶ浦や千波湖の浄化にも役立てようという計画なのですが、霞ヶ浦水系と那珂川水系という本来なら交わることのない水系を繋いで、生物多様性や生態系に問題はないのでしょうか? 那珂川のアユや涸沼のシジミ、ヒヌマイトトンボなど汽水域に生息する生物に悪影響がないと言い切れるのか、外来種の生物が霞ヶ浦から那珂川に進出してきたり、数年前に霞ヶ浦に大きなダメージを与えたコイヘルペスのような病気の発生のような問題が起きたら、那珂川や涸沼川にも影響が出てしまうのではないかなどと不安要素がたくさんあるのです。もちろん霞ヶ浦や利根川の生物にも同様の悪影響がないとは言えません。
霞ヶ浦導水の目的の中には那珂川の水量確保というものがありますが、過去に那珂川では台風の影響で氾濫したことはありましたが、水不足になったという事実があったのかも疑問であるし、都市用水の確保についても現時点ではその必要はないとも報じられています。また霞ヶ浦の浄化、桜川や千波湖の浄化についても、他の方法の方が効果的が見込めるという報道もあり、那珂川の水を霞ヶ浦に流しても水質が異なることから浄化の効果はないという学者もいます。果たしてこのような事業に意味があるのでしょうか?
かつて、長良川河口堰や諫早湾干拓の問題が話題になりましたが、未だに同じようなことが起きているのです。いつになったら、このような無駄な公共事業が無くなるのでしょうか。

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