茨城県の那珂川や久慈川は鮎が釣れることで有名で、鮎釣りが解禁されると太公望の姿がアチコチで見られます。ところが鮎釣りのポイントとして人気がある場所でも、川に堰が作られたことなどによる影響で天然鮎の遡上数が減ってしまい、養殖した鮎を放流しているところがありるのですが、その場所では、この数年カワウが増えて大きな問題になっています。カワウは鮎を狙って川岸の木に群がり、木の枝が雪が積もったかのように糞で白くなってみえます。糞が白く張り付くことで木は枯れるし、夏には異臭がしたり乾燥した糞が風に乗って飛ぶなど深刻な問題になっています。ならば鮎の放流をやめればカワウがいなくなるのではないかと言うことになるのですが、鮎の放流をやめれば観光や漁業に影響が出る。では、川に堰を作らなければ良かったのではと言えば、堰を作らなければ水害に悩まされたり、農地の水不足の問題が出てくるのです。このような問題を抱えた現場を見ていると、地域性の交雑や自然種と養殖種の交雑が鮎や自然に与える影響を考えているのか、単に人の都合だけを考えて自然を変え続けたために自然環境を歪めてしまい、このような事になってしまったのではないかと思えてきます。
鮎に詳しい人は、天然鮎と養殖された鮎を見た目で見分けられると言います。養殖された鮎は餌が豊富に与えられているので肉付きが良く、川を遡上する必要がないのでヒレが不自然に大きくなるのだそうです。言われて見ればもっともな理由で納得できるのですが、一番大きな違いは尾の近くにある豆ヒレの色で、天然物は小豆色なのに養殖物は黒い色をしているそうです。
このような天然物と養殖物の違いは言われなければ分らない程度のもので、たいした事はないと思うかもしれませんが、実は単に見た目や味が違うだけでなく、生態系や習性などにも大きな影響があると言われていて、最近は生物の地域性や遺伝子の撹乱を防ぐために、安易に他所から持って来た生物や人工飼育した生物を自然に放してはいけないと言われるようになりました。これは鮎だけの問題ではなく、各地で環境保護とか自然再生事業などと言いながら人工飼育したホタルを放流していることにも言えることです。少し前には外国から輸入した貝を国内の海岸に放したことによって、今まで国内の海には生息していなかった貝の天敵が繁殖してしまい大変な事になったことが話題になりました。これは放流した貝に天敵を付着していることに気が付かずに放流したことが原因で起きたのですが、これも人為的な放流が起こした問題の1つなのです。
このように人が自然に何らかの生物を加えれば、その影響が必ず加えられた生物や生物を放した環境、そこに自生している生物に現われるものなのです。逆にある種の生物を取り除けば同じように周囲にいた他の生物にも影響が出るのです。自然に加える物が生物であってもこのような影響があるのですから、人工的な物を加えればもっと影響が大きくなるのは当然のことです。このような事例をもっと真剣に考えないと、本当の意味での自然保護・自然の再生にはならないのではないでしょうか。

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