千波公園内には川が流れていて、その川の流れに面した湿地帯を緑地化する工事が進んでいます。写真を見ると、穏やかな流れがあり川岸には菜の花やヨシが茂っているため、自然環境が残されている貴重な場所のようにみえます。春には桜や梅が咲き、秋になるとコスモスやヒガンバナが見られるのですが、その実体は行政に管理されている都市型の公園なのです。
川に面した緑地はもともと水田地帯で、川の両側にある丘からはいくつもの沢が流れていました。その沢筋にはニッコウキスゲやザゼンソウ、ヒメザセンソウなどが自生していて、沢の中にはサワガニやトンボのヤゴ、ゲンジボタルなどがいました。沢が注ぐ小川には、タガメやミズカマキリがいて、クチボソやタナゴ、メダカなどもたくさんいたのです。川の土手にはカワセミの巣があり、穴の中からエメラルド色の鳥が出てくるのを見たくて何度も足を運んだこともありました。早朝にはコジュケイの親子の行進を見掛けたり、森の中ではノウサギと出会い、カブトムシやクワガタを探して遊んだこともよく覚えています。
不思議なことに沢ごとに見られる生物や植物が違い、水田によってもザリガニがたくさんいるところと、いないところがあったり、ヒキガエルの卵がある水田とアカガエルの卵がある水田が分かれていたり、ウシガエルの大きなオタマジャクシは水田ではなくて小川にいるとか、同じ水田地帯の中でも生物が棲み分けしていることを知ったり、植物を観察していて、ここには北方系の植物と南方系の植物が自生していて、まさしく茨城県は北限と南限の境目であるということを教えられた場所でもありました。春には母に連れられ、春の七草を摘んで七草粥を作ってもらったり、山菜を採って天ぷらなどにして食べたことも良い思い出です。
そんな貴重な体験をさせてもらった水田地帯が水田として使われなくなり、いつのまにか湿地帯になって、丘の上にはマンションや住宅が増え、森が荒れ水が汚れた影響を受けて、植物や昆虫たちもどんどん減って行きました。このまま荒廃させてはいけないと緑地化が進められ、見た目には奇麗な公園になりつつありますが、公園内で見られる花はポピーやコスモスなどの園芸種ばかりになり、ザセンンソウやニッコウキスゲなどの貴重な植物は見られなくなり、カワセミの巣があった場所も河川改修でなくなってしまいました。
緑地化が進んだ公園は遊びやすく、奇麗な場所にはなったかもしれませんが、どこにでもあるような代わり映えのしない公園になってしまい、野生生物たちとの出会いや感動が味わえた頃を知っている者にとっては何とも寂しいものです。今でも、野生の生物の姿が僅かに見られますが、そのような姿に足を止め興味を持つ人がどれだけいるのでしょうか? 自然に魅了され経験のある人が少なくなれば、どんどん自然が祖末に扱われ、人にだけ都合の良い街作りが進んで行くのではないかと不安になります。

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