« ハマグリ | トップページ | ゲンジボタルの光の意味 »

2009年5月29日 (金)

ホタルの地域性と適合性

先日、ウェザーニューズから発表になった「ほたる前線」によると、茨城県では6月10日頃にホタルが飛び始めるという予想でしたが、水戸市内の発生の早い場所では5月20日に羽化直後の姿を初見。昨夜は20匹ほど舞っているのを確認できました。しかし、以前、群舞している様子を撮影した場所では、まだホタルの姿が確認出来ていません。

同じ市内の平野部の水田地帯で、環境に大きな差がなく温度などの差もそれほどないところでも、場所によって発生時期が違ったり、形態の特徴が少しずつ違うことがあります。ホタルに限らず生物は生まれ育った環境の影響を大きく受け、それぞれ育った場所に適合した成長をしているから、このような差が出るわけです。同じゲンジボタルでもDNA鑑定をすると全国で6つのタイプに分かれていて、同じ地域に生息するホタルでも、それぞれの自生地の環境に適合して生きていると考えられています。

ホタルを増やすために自生地から採集した成虫に卵を産ませ、サナギになる寸前まで育てたものを放流するといった活動をしている人たちがいますが、このような人たちは水系が同じであれば、ホタルを人為的に移動しても良いと言っています。ところが、自生しているホタルを観察してみると、同じ川でも200〜300メートル離れただけで発生時期がまったく違うところが何ヶ所もあります。この現象は遺伝的な地域性による違いから起きているか、人工飼育したものを放流したことで生態が乱れてしまったために起きた現象なのではないかと思われています。

そもそもホタルの移動能力を超えた移動を人為的にさせることが間違いで、自然から切り離して人工飼育したものを、育った場所と違うところに放流するのだから適合するわけがないのです。仮に多少はホタルが自生している場所に放流しているとしても、その場所に適合しないホタルを放流していては、自生していたホタルにも生態系にも悪い影響を与えるだけで意味がないのです。

自然の生物は単純な足し算引き算で成り立っているわけではなく、複雑に影響し合って成り立っています。ですから100匹の成虫を採集したから、あとで幼虫を100匹放流するとか、元々100匹いたところが20匹になってしまったから、他所の生息地から80匹採ってきて補充すれば良いというものではないのです。考えてみればとても単純なことなのに、何故このような事に気が付かないのでしょうか?

ホタルの研究者が集まった日本ホタルの会や全国ホタル研究会では、数年前から安易なホタルの放流に警笛を鳴らすガイドラインを発表し啓蒙活動をしています。このブログからも自然から切り離し人工飼育したホタル(養殖ホタル)の自生地への放流、地域性を無視した放流や遺伝子交雑、近親交配などの問題を無視して飼育したものの放流をしないようにお願いします。業者から購入したホタルやカワニナの放流なんてもってのほかです。


P5272068

|

« ハマグリ | トップページ | ゲンジボタルの光の意味 »

コメント

こんにちは。
まったく同感です。

絶えてしまったホタルの姿をもう一度!
という気持ちはとてもよく分かります。
が、そのために安易に増やそうとすると
思いもよらない影響を及ぼすとまでは思いが至りません。

自然を再現するとかよいことをしていることのように
思えてくる。ひとりよがりなことなんですね。

一度人間が手を加えてしまうと「自然」ではなくなる。
その「自然」を自然のようにみせるようず~と
手を加え続けなければ、実はその「自然」は保てないのです。

昔は、自然に畏敬の念をもって暮らしていたけれど、
人間は自然を壊しながら(そんな意識はなかったろうけど)
自然をも自分の思い通りにしてしまった今、自然と共存しながら
生きていくことは難しいのだけど、一つの面だけでなく
大きな生態系の中の一員でしかない人間を再認識しなければ
いけない時代になるのではないかと思います。

投稿: ちゅいろ | 2009年5月30日 (土) 15時20分

penちゅいろさん
県内のホタルに関する活動をしている市民団体や企業
を調べてみたら50以上ありました。その殆どが飼育
した幼虫などを放流して増やすという活動をしていま
す。なかには里親制度などと言って、人工飼育を要請
しているところもあります。このような活動をしてい
る人たちは、取りあえず増えれば良いと思っていて、
地域性や適合性の問題、生態系や生物多様性などの問
題は理解してないように思います。

マスコミもホタルことは季節の話題として取り上げま
す。先日、天気関係の情報を提供している会社からの
リリースとして、地元の新聞にホタル前線に関する記
事が出てました。字数制限の関係で記事を短くしない
といけなかったのは分るのですが、要約したことで内
容がまったく違う記事に書き換えられていたのには呆
れました。

そんな記事を書く新聞社だから、ホタルの自生地で乱
獲している人を、ホタルを増やすために活動している
人なんて紹介をしたり、ホタルが舞う公園に外灯が設
置されても何にも不思議に思わず、そこに放流し続け
ている人を奨励するような記事を書いてしまうのだろ
と思います。

企業や市民団体の中には、自分たちのイメージアップ
の為にホタルを利用している人がいます。そんな人た
ちは専門知識もなく、自分の目では観察もしてないの
だと思います。本質なんてどうでも良い。自分たちの
都合の良い話題作りに利用することしか考えてないの
でしょう。

> 一度人間が手を加えてしまうと「自然」ではなくな
> る。

「自然」に手を加えると「不自然」になると言います
が、ホタルやメダカなど水田付近に棲む生物や、森に
棲む生物などのなかには、人が水田や森を手入れをし
ていたから共存できていたものもあります。だから必
ずしも手入れがいけない訳ではないのです。
人の都合だけを考えた身勝手な手入れは問題ですが、
里山を維持するため、人が地球の生き物の1つとして
の役割を果たすための手入れは必要なことなのです。

かつて自然にはたくさんの神(山の神、風の神、水の
神など)が存在していて、生物は神に生かされて存在
していると信じていました。それが自然に接する機会
が減り、神に生かされている事を忘れ人が地球をコン
トロール出来ると勘違いするようになり、都合の良い
ように自然を利用し始めたことが、環境破壊に繋がっ
たのでしょうね。

投稿: Mieton | 2009年5月31日 (日) 15時34分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/175851/45162452

この記事へのトラックバック一覧です: ホタルの地域性と適合性:

« ハマグリ | トップページ | ゲンジボタルの光の意味 »